汀の鳥は



まっすぐばかりじゃない針の回る世界で
翼の折れたことも忘れていた
月は雨雲に遮られて

汀の鳥はきっと隙間風を求めて
足元の暗い舗道の端辺で
聴いていた同じ色をした旋律を

転がりながら見えた幻燈は
塋域の向こうの遥か彼方の景色
無意識の底で信じた風景は
今も見つからぬまま

深い考えなしに始めた逃避行は白昼夢のようで
汚れた手紙がダイヤより叔父に近く思えた

彼らは信じたかった
まっすぐに響く言葉を
自由とか無限の可能性とか
闇雲に足掻くための錆びついた標を

喪った何かを探している
目的が削ぎ落とされた脆い意識で
最後に残された微小の羽ばたきは
軌跡に飲み込まれて

青年に残された前に進むための翼 形ある幻想
男が盗み出した歩みを止めないための翼 形なき現実
背中合わせの双翼は彼らの望む
波濤の迫る海へ

消えていく憧景の残り香を
反響する暗い通路の壁に映して
欠けたピースは歴史が補える
それが僕らの誓い



作詞・作曲・編曲:イトマ
声:アルマード…イトマ
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2017/9/1
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